まずはじめに
皆さんは”求人票”という言葉を聞いたことがありますか?
求人票は「職業安定法によって定められた労働条件を明示した書類」というように定義されています。
「皆さんがその企業に入社した際に受けられる労働待遇について書かれた書類」と考えればわかりやすいかもしれません。
給料はどれくらいもらえるのか?
勤務地はどこになるのか?
どのような職種での採用となるのか?
資格手当てなどは出るのか?
実際に求人票を眺めてみると聞いたことが無い難しい言葉がたくさん使われています。
正社員としての就業経験がない皆さんからすれば難しく感じて当たり前です。
とはいえ、入社後のミスマッチを防ぐためにも応募前に求人票に目を通しておくことは必要不可欠です。
求人票をみてみよう
こちらが高卒向けの求人票です。
白黒で文字も細かいので、敬遠したくなる気持ちもわかりますが頑張って見ていきましょう。
求人票は大きく6つの項目から構成されています。
「会社の情報」「仕事の情報」「労働条件等」「選考」「補足事項・特記事項」「青少年雇用情報」です。
気をつけなければいけないのは、求人票は雇用契約書ではないということ。
賃金制度や福利厚生制度は企業により様々で、求人票にすべての条件が記載されているわけではありません。
気になる企業は、会社説明会や見学会に参加したり、先生・保護者の方とも充分に相談をし、分からないことをそのままにしないようにしましょう。
また、採用時にはきちんと書面で労働条件の明示を受けるのを忘れずに。
それでは早速、具体的な内容を見ていきましょう!
求人票ならではの単語や表現も多く使われていますので、以下の説明を読んでもよくわからない点は、しっかり先生に質問をしてくださいね。
求人票の主な変更点
まずはじめに、2020年1月に求人票のフォーマットが変更され、全3ページから2ページに内容が集約されました。
一部の項目について追加や削除されていますが、ほとんどの項目は引き続き掲載されています。
学校に保管している去年までの求人票とは若干記載場所などが変更されていますので、注意してチェックしましょう。
1.会社の情報
ここでは企業の基本的な情報が書かれています。
事業所名
正式名にカタカナや英字が使われていたり、名前が似ている企業がある場合も。
調べたかった企業ではなかった!なんてことのないように、注意しましょう。
事業内容
ここでは会社が行っている主な事業についてが書かれています。
COURSEでいう「業種」にあたる部分の詳しい説明です。
様々な事業を行っている企業の場合には、その求人票で募集している仕事内容以外のことも明記されていることもあります。
2.仕事の情報
ここでは、仕事内容や職種名など、実際にどのような仕事をしていくかが書かれています。
雇用形態
雇用形態には以下の種類があります。
- 「正社員」:直接雇用で雇用期間の定めがなく、フルタイムのもの
- 「正社員以外」:臨時社員、契約社員、嘱託社員など、正社員以外のもの
- 「有期雇用派遣」
- 「無期雇用派遣」
「正社員」と「無期雇用派遣」には、雇用期間の定めがありません。
入社後は、特別の理由がない限り、原則定年まで永年的にその企業と雇用契約を結ぶこととなります。
「正社員以外」と「有期雇用派遣」には雇用期間の定めがありますので、雇用期間も必ずチェックしておきましょう。
あわせて「契約更新の可能性」の欄も確認しましょう。ここには、雇用期間を満了したあとの契約更新について書かれています。
「条件つきで更新あり」の場合には、5.補足事項・特記事項 に詳しい条件が明記されます。
就業形態
就業形態には以下のいずれかが表示されます。
- 派遣・請負でない:雇用元企業と勤務先企業が同じ。
- 派遣:雇用元企業と勤務先企業が異なり、勤務先企業(派遣先企業)の指揮命令の元に業務を行う。
- 紹介予定派遣:派遣先企業への転籍を前提とした派遣就業。
一定期間(最長6ヶ月)の派遣就業の後、派遣先企業との双方合意のもとに直接雇用契約を結ぶ。
直接雇用後の雇用形態は、正社員・契約社員などが主。 - 請負:雇用元企業と勤務先企業が異なり、雇用元企業の指揮命令の元に業務を行う。
雇用元企業とは、実際にみなさんが雇用契約を結ぶ企業のことです。お給料や休日などの条件は、雇用元企業が提示する条件になります。
勤務先企業とは、実際にみなさんが日々の業務を行う企業のことです。
「派遣」と「請負」は、似ているようですがちょっと違います。
細かくいうと契約内容などの複雑な違いがあるのですが、こんなイメージでざっくり覚えておくとわかりやすいかもしれません。
- 具体的な業務に関する指示を派遣先(勤務先)から受けるのが「派遣」
- 雇用元の方から具体的な指示をもらい業務にあたるのが「請負」
仕事の内容
採用後初めて従事する仕事についてや、将来見込まれる仕事の内容などが明記されます。
みなさんが仕事を選ぶ上でとても重要な部分ですので、気になる点不明点などは先生に細かく質問するなどしっかり確認をしましょう。
就業場所
実際に働く場所が明記されています。
1.会社の情報 で明記されている所在地とは異なる場合があるので、もれなく確認をしましょう。
また、就業場所が採用後に決まるなど求人票では特定できない場合なども、5.補足事項・特記事項 に記載されますのであわせてチェックしておきましょう。
マイカー通勤
茨城では可の場合が多いですが、公共交通機関や所定の乗車場所からの専用バスなど指定がある場合もあるので、忘れずに確認しておきましょう。
また、駐車場代が有料の場合もあります。5.補足事項・特記事項 もあわせてチェックしましょう。
試用期間
試用期間とは、簡単に言うと「お試し期間」のようなもので、みなさんの勤務態度や能力・適正などがマッチしているかを企業が見極める期間です。
チェックされる、と聞くと「結果次第ではクビになってしまうの?」と心配になるかもしれませんが、そんなことはありません。
長期雇用・本採用を前提にしていますので、正当な理由(経歴詐称・遅刻欠勤が多い・勤務態度に問題ありなど)がないかぎり解雇されることはありませんので、安心してください。
試用期間の有無やその長さ、期間中の労働条件が異なる場合など、5.補足事項・特記事項 に詳しい補足が明記されますのでそちらもあわせて確認しましょう。
屋内の受動喫煙対策
2020年4月に施行された健康増進法の一部改正のため、望まない受動喫煙を防止する取組が企業に義務付けられました。
それに伴い求人票にも、喫煙所の有無や分煙についての対策内容などが明記されることとなりました。
3.労働条件等
ここでは、賃金(月々の給与・諸手当・ボーナスなど)をはじめ、実際にその会社で働く際の条件が書かれています。
加入保険等
多くの企業で基本的に加入となるのが下記4つです。
- 雇用:雇用保険。失業した場合などに支給されます。
- 労災:労災保険。業務上の病気・ケガなどの場合に支給されます(公務員の場合「公災」)
- 健康:健康保険。業務外の病気・ケガなどの場合に支給されます。
- 厚生:厚生年金保険。老齢になった場合・障害が残った場合・死亡した場合などに支給される年金です。
その他、下記もチェックしておくとよいかもしれません
- 財形:勤労者財産形成促進制度。いわゆる貯蓄制度ですが、税制面で優遇されます。
- 退職金共済:退職金を確実に支払うために企業が預金を社外に積み立てる制度です。
入居可能住宅
単身用・世帯用それぞれの住宅についての有無が書かれています。
利用条件や費用がある場合には、5.補足事項・特記事項 に明記されます。
通学
資格取得などのための通学制度を認めている場合は「可」と記載されます。
詳しい内容について、5.補足事項・特記事項 に明記されている場合がありますので、あわせて確認しましょう。
賃金締切日・支払日・形態等
お給料について、どの単位(形態等)で算定された・いつまでの分(締切日)が・いつ(支払日) 支払われるのかが書かれています。
賃金形態には、下記のような種類があります。
- 月給:月単位で算定される賃金
- 日給:日単位で算定される賃金
- 時給:時間単位で算定される賃金
- 年俸:年額が決められ、各月に分けて支給されます。支払い方法は会社ごとに異なります。
なお、賃金形態=支払サイクル ではないので注意しましょう。
例えば、[賃金締切日:月末][賃金支払日:翌月15日][賃金形態:日給]の場合、日単位で算出された日給×1ヶ月に出勤した日数の合計額が翌月の15日に給料として支払われる、という仕組みです。
上記の場合、4/1に入社してから4/30までに勤務した分のお給料は5/15に支払われることになります。
各種休暇取得実績
育児・介護・看護についての休暇取得の実績が明記されています。
制度として整っているだけでなく、実際に活用している社員の方がいるかどうかが明記されていますので、ぜひ参考にしましょう。
賃金等
みなさんに支払われる給料などについての金額が明記されています。
見出しの部分に「現行」「確定」のいずれかが書かれています。
「現行」の場合には、採用予定者の賃金がまだ確定していないため、その年に入社した高卒採用者の賃金が参考として記載されています。
最終的な金額などについては、雇用契約書等で確認するようにしましょう。
実際の賃金支払日にみなさんの手元に支払われる金額は、この賃金等の合計額ではありません。
賃金等の合計額から保険料などが引かれ(控除され)ます。
この、みなさんに実際に支払われる金額を「手取り額」といいます。
新しいフォーマットでは手取り額の明記がなくなりました。
手取り額は個人や企業により様々ですが、おおよそ賃金等の合計の70~80%程度になります。
就業時間
始業・就業時間が決められている定時制以外にも、「変動労働時間制」「フレックスタイム制」「交代制」など、様々な勤務制度があります。
時間外
1ヶ月あたりの、就業時間を越えた勤務(残業)時間が明記されています。
休日等
それぞれ下記のような内容で、お休みについての細かなルールが記載されています。
- 休日:
曜日などの休日ルールが明記されます。シフト制や曜日固定ではない場合もありますので注意しましょう。 - 有給休暇日数:
有給休暇とは、字のとおり賃金が支払われる休暇です。1年ごとに所定の日数が付与されます。
例えば、入社時が0日・6ヶ月経過後が10日、という表記の場合には、入社後半年を経過すると、そこから1年の間で10日間、賃金の発生する休暇を最大10日間取得することができます。
なお、ここで明記されているのは取得実績ではありません。平均取得日数の実績は、青少年雇用情報の欄で明記されていますのであわせてチェックしておきましょう。 - 週休二日制:
1週間のうちに2日の休日があるかどうかが書かれています。
毎週2日ずつ休日がある場合「毎週」、1週ごとなどの場合「その他」、週休二日制ではない場合「なし」と明記されます。
週休二日制=土日休み、という意味ではありません。
土日や祝日など、カレンダーの赤文字の日は休みたい! という場合には、週休二日制が「毎週」で、かつ休日として「土・日・祝」が該当しているかどうかをチェックしましょう。
4.選考
ここでは選考に関する情報が書かれています。
受付期間・選考日
受付期間の終わりが決まっていたり、選考日があらかじめ特定の日に限定されている場合もあります。
希望する企業に応募し忘れたり、選考を受けられなくなったりしないよう、しっかりスケジュールを確認しておきましょう。
複数応募
こちらに「可」と明記されている場合、あらかじめ決められた期日以降は、複数社への応募が可能となります。
応募前職場見学
「可」と書かれている場合、職場見学が可能です。補足事項・特記事項の欄の補足をあわせて確認し、希望する場合には早めに先生へ相談しましょう。
選考場所・選考方法
選考についての詳細が書かれています。
選考場所が勤務地とは異なる、県外の本社で選考を実施する、などのケースもありますので、忘れずにチェックしておきましょう。
5.補足事項・特記事項
ここでは、これまでの記載内容に関する補足が書かれています。
欄が小さいため、十分な説明が書かれていない場合もあります。気になる点は先生にも質問をし、できるだけ応募前に不明な点を減らしておきましょう。
青少年雇用情報
ここでは、新卒採用やスキル・キャリアアップ等に関する情報が書かれています。
募集・採用に関する情報
直近3年間の採用人数や離職者数が、全体と高卒に分けて明記されています。
1.会社の情報 欄にある従業員数と比較することで、若手社員の割合などもうかがい知ることができます。
また、平均年齢や平均勤続年数も明記されています。
職業能力の開発および向上に関する取組の実施状況
研修・資格取得支援などの具体的な内容や、メンター制度の有無などが明記されています。
メンターとは、仕事だけでなく生活面や将来のことなど様々な悩みを相談できる先輩・助言者を指し、みなさんの入社後をフォローしてくれる頼もしい存在です。
もちろん、メンター制度がない企業は誰にも悩みを相談できない、なんてことはありませんので、制度がなくても必要なときには先輩や上司に相談をしましょう。
職場への定着の促進に関する取組の実施状況
時間外労働時間や有給休暇の取得、育児休業など、その企業の勤務実態をうかがい知れるようなデータが明記されています。
まとめ
かなりのボリュームでしたね。大変お疲れ様でした。
ここからも、求人票は少ないスペースにとても多くのことが書かれていることがわかりますね。
どの情報も仕事を選ぶためにはとても大切なポイントですし、このスペースだけでは書ききれない条件や企業の特徴がたくさんあります。
求人票だけで仕事を選ぼうとせず、職場見学に参加したり、進路指導の先生に相談するなどして自ら情報を取りにいく姿勢を大切にしましょう。
ぜひみなさん自身でいろいろな情報を調べて企業探し・仕事探しをしてください。